吸入薬に関して
吸入薬に関して

長引く咳の治療において、欠かせない薬のひとつが吸入薬です。気管支喘息をはじめ、慢性気管支炎・COPD(慢性閉塞性肺疾患)・咳喘息など、さまざまな呼吸器疾患で使用されます。
どの疾患も共通して、「呼吸を楽にすること」「気道の炎症を抑えること」が治療の目的となるため、薬を直接、気道に届けられる吸入薬は非常に効果的です。
内服薬では、薬が血液を通じて全身を巡り、最終的に肺へ届きます。一方、吸入薬は有効成分をピンポイントで「現場」に届けることができ、全身的な副作用を最小限に抑えることができます。
たとえば吸入ステロイド薬は、気道の炎症をコントロールして発作(急性増悪)を防ぎ、症状を安定させます。ただし、正しい吸入方法を身につけなければ十分な効果が得られません。薬が気道に届かず、口や喉に残ると副作用が起きることもあります。適切な治療効果を得るためには、医師・薬剤師・看護師の指導のもとで正しい吸入手技を習得することが大切です。
(3分程度の指導動画を見ることをおすすめしています)
吸入ステロイド薬は、気道の炎症を抑えて発作や症状の悪化を防ぐ主軸の治療薬です。一方で、「ステロイド」と聞くと副作用を心配される方も多くいらっしゃいます。
経口ステロイド薬は血液を通じて全身に作用しますが、吸入ステロイド薬は気道粘膜に直接作用するため、体内に入る量がごくわずかです。そのため、骨粗鬆症・体重増加・ムーンフェイス(満月様顔貌)など、全身的な副作用はほとんど心配ありません。
吸入ステロイド薬で注意したいのは、薬が口や喉に残ることで起きる口腔カンジダ症などの局所的な副作用です。しかし、吸入後にうがい・口すすぎをしっかり行えば、リスクは大きく減らせます。適切な手技で使用すれば、ほとんどの患者様が安全に治療を続けられます。
吸入療法は、さまざまな呼吸器疾患において症状を和らげる有効な手段です。以下のような病気で活用されています。
| 病名 | 特徴 |
|---|---|
| 気管支喘息 | 気道の慢性炎症と過敏性により、咳・喘鳴(ゼーゼー音)・息苦しさが繰り返し起こる。 |
| 咳喘息 | ゼーゼー音がなく、咳だけが長く続くタイプの喘息。 |
| COPD(慢性閉塞性肺疾患) | 喫煙や大気汚染が原因で、気管支・肺がダメージを受け呼吸がしにくくなる。 |
| 慢性気管支炎 | 慢性的な咳や痰が続く状態。しばしばCOPDの一部として扱われる。 |
いずれも、炎症を抑える・気管支を広げるといった目的で吸入薬が使われます。正しい吸入療法は、症状のコントロールと発作予防の要になります。
吸入器にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴や使い方が異なります。大きく分けると、定量噴霧式吸入器(MDI)、ドライパウダー吸入器(DPI)、ソフトミスト吸入器(SMI)の3種類があります。
ここでは、どの吸入器にも共通する基本の流れを紹介します。
準備
吸入器の組み立てや薬剤残量を確認します。MDIでは使用前にカートリッジを数回振る必要があります。
姿勢と呼吸を整える
背筋を伸ばし、立つか椅子に座って実施します。吸入前に軽く息を吐いて、肺の中を空にしておきましょう。
吸入器のくわえ方
マウスピースを唇でしっかり覆い、隙間を作らないようにします。DPIではくわえた瞬間に勢いよく吸うのがポイントです。
吸入動作
呼吸を止めて薬を行き渡らせる
吸入後、3〜5秒(可能であれば10秒)息を止めましょう。苦しい場合は無理せず、自分のペースで構いません。
ゆっくり息を吐く
口からゆっくり息を吐きます。複数回吸入する場合は、30秒〜1分ほど間隔をあけてください。
うがいと口のすすぎ
吸入後は口の中に薬が残りやすいため、うがいを2回(すすぎ→ガラガラ)行いましょう。すすいだ水は飲み込まず、吐き出してください。
吸入器の手入れと保管
マウスピースを柔らかい布で拭き、水洗い可の製品はしっかり乾燥させます。高温多湿や直射日光を避け、小さなお子さんの手の届かない場所で保管します。
症状が落ち着いても薬をやめると再発のリスクがあります。医師の判断に従いましょう。
効果や副作用の確認のため、定期的に呼吸状態をチェックしましょう。
時間が経つと自己流になりがちです。定期的に医師・薬剤師に確認を。
禁煙やアレルゲン対策も並行して行うと、治療効果が高まります。
吸入療法は、喘息・COPD・咳喘息などにおいて最も重要な治療法のひとつです。正しく使えば発作や再燃を防ぎ、呼吸を穏やかに保つことができます。もし「使い方が不安」「効果を実感しづらい」と感じる場合は、遠慮せず医師や薬剤師にご相談ください。正しい手技を身につけることが、安心して深呼吸できる毎日への第一歩です。
なりません。吸入薬は気道の炎症を抑える治療薬です。必要な量を使うことが大切です。
吸入手技や吸入器の種類が合っていない可能性があります。再確認や変更で改善する場合もあります。
うがい不足や薬の残りが原因かもしれません。使用後のうがいを丁寧に行いましょう。
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